広島高等裁判所 昭和24年(う)644号 判決 1950年8月02日
被告人
大田栄三
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人博田一二の控訴趣意第一点について。
原審第一回公判調書の記載によれば被告人は、花札を一人に八枚づつ配り手許の札の良い者だけがやり悪い者は退くのであつて、手の良い者だけが勝負をするのである。碁石一個を十円と定め、最初碁石を現金と替えて博に賭け最後に金を計算するのである。十点勝てば碁石一個を買ふのである。自分は最初現金百円出して碁石十個を貰い、尚晝間菓子を買つたつり錢三十円で三個貰い都合十三個持つていた。自分は三、四回花札を配つて貰つたが手が悪くて一回も勝負はしなかつた旨自供しており、弁護人は之を以て準備行為と解し賭戯の実行ではないと主張するのであるが、苟くも賭錢博戯を為すため既に賭金を提出し居り、尚花札の配布をも受けた以上はたとえその都度手札が悪くて一度も現実の勝負に加はらなかつたからと云つて最早賭博の実行の範囲に入つて居るものと云ふべく賭博罪の既遂を以て論ずべきものである。